子供の頃の記憶を辿りながら、千葉県の野生ランを探す

誰も信じてくれない話「うーたん事件」

                

エピソード1


誰も信じてくれない話「うーたん事件」
これは私が小学生の頃に体験したエピソードです。
ある日、近所のおじさんが、田んぼの畦道の穴から一匹の赤ちゃん野ウサギを拾ってきました。
野ウサギは、穴を掘って巣を作るのですが、どうやら野良犬などに襲われたのか、数日経っても穴に親うさぎが帰ってくる気配がなく、 瀕死の状態だった乳飲み子のウサギが死んでしまうと思い、私の家に持ってきました。

当然のように育てる事になり、兄と共に布にミルクを湿らせて与えるなどの試行錯誤で、次第に元気になりました。
名前は「うーたん」と名づけ、私たちにはすっかりと慣れました。
「うーたん!」と呼ぶと、ぴょんぴょん飛んで来てくれるほどでした。
ですから家の中にほとんど放し飼い状態となり、就寝時のみ籠に入れていました。

それから半年ほど経ったある日の事。
家の中で決して私たちの側から離れなかったうーたんが、消えてしまいました。
家族総出で探しまくりましたが、見つける事は出来ませんでした。

奇しくもその夜は「十五夜」で、母親は「月に呼ばれたのよ」
などと言っていたのを「なるほど」と納得したのを今でも覚えています。

それから月日が流れ、3年が経ちました。私は高学年になっていましたが、相変わらず山の中を掛け回っていました。この年の冬、事件が起こりました。

この時は家の裏山で友人達数人とパチンコに木の実を装着して「なんちゃってサバイバルゲーム」をしていました。
すると、ガサガサと動き回る物体を発見。速さからみて野ウサギと思われました。野ウサギに山で遭遇すると、まず立ち止まる事もなく、目で追うのも 難しいスピードで逃げていきます。この時も誰かが「野ウサギだ!」と叫んだ瞬間には猛ダッシュして止まる気配などありませんでした。

この時、私は瞬間的になぜか「うーたーん!!」と叫んでいました。勿論、野ウサギなど私の暮らす地域では珍しくもなく、よく遭遇する動物でした。 しかし、このときばかりはあの「うーたん」に思えたのです。

すると、その野ウサギは動きを止め、耳を立てて振り向いたのです。数秒目が合うと、静かにゆっくりと森の中に消えていきました。

キンラン


あれは「うーたん」だったと確信しています。しかし、誰も信じてくれません。  完